北海道の夕張と言えば、炭鉱の町、メロンの町、財政破綻した町などなど、色んなイメージがあるかと思います。このどれも間違いではないのですが、こうした夕張のイメージは夕張の一部でしかなく、実は夕張には今はなき「もう半分」があることをご存じでしょうか。その半分はかつて大夕張と呼ばれ、炭鉱の町として栄えました。
その大夕張、今はもうシューパロダムの底に沈みました。ダムの底に沈んだとはいえ、夏の渇水期にはダムの水位が下がり、かつての大夕張が姿を現します。建物はすべて解体された上でダムに沈んだのですが、道路や橋などは今も夏になるとダムの底から姿を現すので、それをどうしても見てみたいと思っていました。
しかし現地はすでに人がいなくなったこともあって、人よりも熊のほうが多いような地域です。熊の気配に怯えつつ、かつての大夕張の最果てである「沈みゆく道路」を見に行ってきたレポートです。
夕張は「何かの跡」だらけ
夕張に足を踏み入れると、至る所にあるのが「何かの跡」です。炭鉱の町として栄えた名残で、そこから急激に寂れてしまったことが随所に見て取れます。
こちらは、かつてあった夕張支線の廃線跡です。炭鉱から採掘された石炭を運び、石炭のためにここに暮らしていた人たちを運んでいた鉄道でしたが、今はもう廃線マニア垂涎の線路が残されているのみです。


踏切はすでに撤去されているのですが、たぶん予算の関係で線路はそのままです。そうなると、このように線路がブツ切れになった私の大好物の風景が出来上がります。またこの線路が単線というのも、廃線フェチの心をくすぐります。
とはいえ、今回のお目当ては夕張支線跡ではありません。こちらは夕張の「東半分」なので、今回のお目当てである「西半分」に向かいましょう。
現国道452号から見えるシューパロダムには、大夕張の名残も
夕張の西半分にあたる大夕張はすでにシューパロダムに沈んでいます。しかしながら現国道452号からは、かつての大夕張の名残のようなものがチラホラと見えます。

ダムの際には道路らしきもの、ダムの中には鉄橋らしきものが見えますね。また、街路樹だったことを思わせる、直線に並んだ木々も見て取れます。ここに、大夕張がありました。

奥に見える橋は、現役の白銀橋です。しかし、この白銀橋も長らく通行止めになっているので、今後また通れるようなるかどうかは不透明です。なお、先ほどの写真に見えていた鉄橋の「上部分」が、旧白銀橋です。
以下の写真にも、旧白銀橋が見えていますね。渇水期なのでこれだけ見えていますが、それ以外の季節はこれすら見えません。

かつての大夕張をしのぶモニュメントが、いくつかあります。ここでは割愛しますが、大夕張のことを後世に伝えるかのような解説看板もあります。

ピーク時には2万人が住んでいた大夕張だけに、それがダム湖に沈んでいるというのは、かなりの大きな出来事です。
旧国道452号から、かつての大夕張に入る
大夕張には、かつて国道452号が通っていました。今はもっと高いところに現道がありますが、旧国道452号も道路と言えるほどの状態が残されているので、ここからシューパロダムの中を目指して行きましょう。
ここから先は熊との遭遇が怖いので、ラジオを大音量で流しながら立ち入りました。なお、この柵を超えて歩いていると、熊鈴を鳴らしながら歩いている人とすれ違いました。やはり、熊対策は必須のようです。

そのことは、現国道452号に出ていた看板で十分ビビらされています。

この探訪をしたのは2023年9月です。ほんの2か月前に熊が出てるやん・・・。夕張市のサイトを見ても頻繁に熊の目撃情報があるので、本当に熊対策は必須です。
大音量のラジオとともに旧国道452号を進んでいくと、今もクルマで走れそうな道路ですね。以後、こんな感じの道路が続きます。

旧国道452号はダムの底に向かっていく進路だけに、ずっと下り坂です。それだけに、途中からは渇水期以外はダムの底になっているエリアに入っていきます。路面に泥のようなものが増えてきたことで、ここはダムの底なんだと実感できます。



管理されていない道路だけに、草ボーボーではありますが、それでもクルマは走れそうですね。
かつての大夕張の名残があちこちに
ダムの底に向かって進んでいくと、このあたりからは大夕張の町があったあたりです。こうした人工物に出くわすようになります。


このキリ助というのは、大夕張名物です。かつての大夕張時代からあったそうで、先代は今の姿ではなかったそうです。しかも場所もここではなかったそうですが、今の姿からアップデートされることはありません。
え、これって熊の痕跡では・・・
こうした大夕張の名残を楽しみつつ、前に進んでいきましょう。
ここでは、道路の路肩が崩落しています。ガードレールはボロボロ、路肩に置かれているのは流木ということで、すでにここが廃道となってから置かれたものでしょう。

その先をさらに進んでいくと、道路に血のようなもの、しかも引きずったような痕跡が・・・

これって、熊が獲物を引きずって歩いたんですかね・・・
大夕張の名残を探すはずが、熊の痕跡まで見つけてしまったのでした。できるだけ遠くで熊を見つけて早めに退散する態勢を整えつつ、先に進みました。
大夕張・千年町があったところに到達
急に景色が広がってきました。ここからは、大夕張の市街地があったところです。古地図と照合してみると、このあたりは千年町です。千年町があったあたりももう何もありませんが、道路や建物の基礎部分、かろうじて人工物がチラホラと残っています。

このように道路があった部分は分かります。

道路があったところ、何か建物があったところの色分けは分かりますね。木々が立ち枯れになっていることからも、このあたりは普段ダムの底であることが分かります。
そしてこちらは、大夕張に来て初めて見た、人工物(?)です。ツバメ学生服・・・聞いたことないですが、このあたりに学生服の店があったんでしょうね。




この道路は行き止まりになっていて、その先はダムです。千年町は大夕張の中でも比較的ダムに沈む部分が少ないですが、ここから先はダムの底です。いえ、このあたりも泥のたまり具合や流木の状況を見ても、普段はダムの底であることが分かります。
道路以外になかなか人工物を確認できませんが、注意深く見ていると人工物の名残を見つけることができます。

マンホールらしき残骸と、階段。こんなにはっきりと人工物を確認できたのは、ツバメ学生服以外に初めてでした。

ここにも人工物がありました。ダムの底に沈んでも、こういう遺構はしっかり残るんですね。
こちらは、広角にして撮ってみました。本当に道路以外何も残っていないのがよく分かります。

国道と大夕張鉄道の橋はしっかり現存
千年町の跡地探訪を終えて、次は明石町の跡地に進んでいきましょう。ここには国道452号だった橋と、大夕張鉄道だった橋が残されています。
こちらは、かつての国道452号です。今もクルマが通れそうな状態です。

そしてこの写真の左側に写っている、もうひとつの橋が分かりますか?この橋は、大夕張鉄道の鉄橋です。この鉄橋を見ると、こんな感じです。

こちらも、今でも鉄道が通れそうに見えるほどの状態ですね。
こちらの鉄橋はどうなっているのか興味津々だったので、近くまで見に行ってみました。

何となく鉄橋の様子が見えてきました。さらに近づいてみましょう。

え、これが鉄橋??
ここを鉄道が通ってた??
と思うほど、幅が狭い鉄橋でした。単線とはいえ、ここを石炭満載の鉄道が通っていたことを考えると、なかなか壮観です。
それでは道路のほうに戻って、旧国道の橋も探訪してみましょう。

なるほど、橋の名前が分かりました。「明石橋」でしょうかね。銘板がしっかり残っていることからも、しっかりと作った橋ということが分かります。
そして、この橋は昭和27年に出来たみたいです。その割には状態もいいし、やはりしっかりと作られた橋なのかなと思います。

大夕張の中心部へ
明石町の中心部を通り過ぎて、さらに先に進みます。このあたりからは道路わきの木々も立ち枯れしているので、普段はダムの底であること分かります。道路と並走している線路跡を見ると、すぐ近くを大夕張鉄道が走っていたことが分かります。

このあたりの道路には、たくさんの流木が散乱しています。普段はダムの底ということが分かりますし、何とも荒涼とした風景です。何というか、世界の終わり、この世の果てのような。

このあたりに来ると大夕張の中心部でもあるので、建物の名残もはっきりと確認できます。



何かの看板だったっぽいものも、あちこちに落ちています。ピーク時は人口2万人の町だったこともあって、すべてを引き払って無人になったとはいっても、こうした人の営みを感じさせるものはたくさん残っています。
いよいよ最終目的地「沈みゆく道路」
シューパロダム探訪も、いよいよクライマックスです。渇水期であってもダムの底から姿を現さない部分と、渇水期に歩ける部分の、境界線です。旧国道452号を見られる最後の地点である「沈みゆく道路」、これを見たくて今回のシューパロダム探訪に来たのです。
その最終地点に向かっていきましょう。
まずは、最終地点の左側にあるもうひとつの「沈みゆく道路」です。この先には、旧白銀橋があります。ダムになっている部分も、何となく道路があった名残が分かりますね。

近くまで行ってみると、この先に道路があって街路樹が並んでいる感じが分かります。

この道路の先には、旧白銀橋が見えています。これは高いところからも見えていたもので、近くから見ると、よりこの道路の先にあるものであることがよく分かります。

アップにして撮ってみました。これだけしっかりと遺構が残っているのは萌えますね!

それでは本題に戻って、旧国道452号から一番奥に進んでいきましょう。すでに最終地点が少し見えています。右側に写っているカーブミラーも、普段ダムの底にあるとは思えないほどの現役感です。

興奮を抑えつつ、熊にビビりつつ、最終地点に近づいていきます。

遂に到達した、最終地点です。本当に道路がダム湖に沈んでいます。横にあるガードレールが斜めになって沈み込んでいるところも、私の期待通りの風景です。
今、熊が後ろから出てきたら逃げるところがないのでジ・エンドですが、それでも念願の風景を前にして、しばらく眺めていました。

最終目的地の探訪を終えて、旧国道452号につながっている道路があることに気づきました。気になったので登ってみると、ガードレールはボロボロ、路面はすでにアスファルトが全くなく、道路のテイを成していませんでした。

これにて、シューパロダムに沈んだかつての大夕張探訪を終了したいと思います。



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